ドナーエッグ

ここ1ヶ月くらいの間に卵子提供(donor eggs,egg donation )の話を3人の患者さんからされました。3人の方がどこまで考えているかわかりませんが、以前には相談されたこともありませんでした。野田聖子議員の事例などが影響しているのでしょうか?

ネットで知り得る情報の方がはるかに多いと思われます。
所属している生殖医学医会では第三者卵子提供を用いる生殖医療について提言をし、いろいろな規制をした上で認める方向でいます。今のところ「提言」で実際に国内で行われているわけではないと思います。ただ、以前、マスコミで長野県の産婦人科で行われたと聞いたことがあるくらいです。
提言の要点は、まず法整備について、具体的には①分娩した女性が子の法的な母となること②分娩した女性の夫で第三者による卵子提供に同意した者が法的な父になること
次に施設について、おおむね全国で5施設くらいを想定していること、公的機関であること、カルテを80年間保存できること等々 80年間存続することが保証される施設は大学や国立病院になるのでしょう。
次に提供者は匿名の第三者を原則とするが、姉妹や知人でも認めるとしています。匿名の第三者はボランティアで休業補償や交通費くらいで報酬をもらってはいけないとされています。これでは現実的には提供者は出てこないと予想されます。

提供卵子での妊娠出産においては、妊娠高血圧症候群の発症頻度が高いと報告されました。提供を受ける女性が40歳を超える人が多いことや、他人の卵子なので免疫機構に異常をきたしやすくなることなどが原因と推測されているようでした。

この問題は個人の子供を持ちたいという希望であり、他人に迷惑をかけることではないから認めるべきだという意見と、第三者が関与するから必ず問題が起こるとする意見や自分と同じ遺伝子を持つまったく知らない人がいるという今までにはない状況を作り出してしまう危険性と将来子供が、自分の出自を知る時どう思うかな子供の福祉のことが、議論されてきたと思います。

提供卵子をするかどうか、あくまでも個人の考えであり、私が意見するようなことではないと思います。ただ、少なくとも言えることは私のクリニックではできないということです。上にも書いたように施設は80年間カルテを保存しなければならないわけで、今から80年後は私は128歳になるわけで、120%この世にはいないでしょう。